長女のこと 42~43:院内学級

42. 転院後の楽しみ

S病院は 同じ県内ではあるが、自宅からは 高速で1時間半位かかる周りに何もない 丘の上に建っていた。
当時 出来てから数年しか経っておらず、とても綺麗な病院にそして 全てがゆったりと造られた 広々した開放感に長女と私は「わー 綺麗」 テンションが上がった。
そして長女も 私も大好きな スターバックスコーヒーが入っていた

コーヒーが大好きな私にとってコーヒーの香りは リラックス効果があった。
S病院に着いて 直ぐに Y先生が 診察してくれた。
診察室に居たY先生は とても穏やかで 優しい新聞の記事の 印象通りの 医師だった。
長女に 私が「新聞に載ってたまんまの先生だね〜」と声を掛けると
Y先生「新聞見ました? あの写真 ちょっとおじいちゃんに写ってたよね?
長女に声を掛けてくれた。長女は ケラケラ笑っていた。

そしてY先生「前の病院でも 色々検査したと思うけど、ここの病院で もう少し検査して それから 治療するからね。あと、この病院の中は 自由に どこに行っても良いから、
   外に出たい時は 看護師さんや 医師に 相談して下さい。

「え~! 動いて良いんですか?」
驚いた!
都内の病院に居る時は個室か 廊下の先のトイレのみの行動範囲の制限があった。

なのにこんな広い病院でどこに行っても良い!長女も驚いていた。

Y先生「病院内なら   万が一 気分が悪くなっても   直ぐに対応出来ますから、大丈夫ですよ。それから、 病院のご飯だけだと 飽きてしまうかもしれませんので、好きなものを食べてもらって 大丈夫です。

「え~ ! 何でも 良いんですか?」

Y先生「食べた物と 量だけ 看護師さんに伝えて下さい。

長女 嬉しそうに ニコニコしていた。

Y先生「それから この病院には 院内学級があります。体調が良い時は 行くと 同じぐらいのお子さんがいるので、気分転換になると思いますよ。

え〜 院内学級 行けるんですか?

Y先生「本人の体調が良ければ  行けますよ。体調が悪い時は お休みして大丈夫ですからね。」長女も 私もハイタッチしたいくらい嬉しかった。

なぜなら、都内の病院で 広いとは言えない個室に 10日程 二人っきりで過ごし、
病気の為に イライラしていた長女が(イライラや不安感は 病気の症状でした)
強いステロイドの点滴の副作用で 更にイライラが増していたので、これ以上 二人っきりで過ごすのがお互いに 精神的にも 辛かったのです。

しかも都内の病院の脳外科には 子どもは 誰も居なかった。
S病院には 同じくらいの歳の子がいる!

長女は すごく人見知りなのに「ぐに 学校に行きたいです!」ニコニコしながら 言っていた。
入院する前は長女「学校なんて 行きたくない!」と言っていたのに。
学校に行けて
友達と一緒に勉強出来る幸せを 痛感したのだと思う。

S病院に転院して 3日目から院内学級に通えることになった。

手続きは完了していなかったが、長女が 早く行きたがっていたので先生方や ケースワーカーさんのご尽力のおかげで長女は 院内学級に 早々に通えることになった。

前日から 何度も  手提げ袋に 筆記用具を入れては 確認して楽しみにしていた 長女

長女「どんな お友だちがいるかなぁ〜
久しぶりに 笑顔いっぱいの 長女を見た。

元気で 学校に通っていた時とは 別人のようだった。
学校に行けること、友達と一緒に 学べることの幸せを痛感したのだと思う。

43. 祖母の思い

案内された病棟は 広い病院の 左側の奥の 4階だった。
小児病棟に入院すると思っていたが血液腫瘍科に 入院することになった。

やっぱり・・・癌なんだ。 改めて 思い知らされた。

点滴をして髪の毛が抜けている 小さな子たちが プレイルームで遊んでいた。
“いよいよ 長女も 治療が始まるんだ!”複雑な気持ちだった。
都内の大学病院に 入院していた時、私の母が 病室に来て「髪の毛 伸びたから 切ろう!  七五三の写真も撮ったし(正しくは 弟と妹の七五三) 入院中 長いと大変だからね!」
と 髪の毛を切る道具 一式持って来ていた。

私の母は以前 介護福祉士として ターミナル病棟で 25年程 働いていた。
色々な患者さんが居て 病室で 髪の毛を切ったりしていた。

長女の病気が 脳腫瘍と聞いて 色々 調べて 長女が 今後どうなるのか わかっていたのだと思う。私は 突然 付き添い入院になりスマホもなく 長女の病気に付いて 無知だった。

私の母「髪の毛を 何箇所かに分けて   一回 結んでから    三つ編みして    下も結んで!」私には 意味がわからなかった。

私「何で そんなめんどくさい事 するの?」
私の母「良いから!   この方が散らからないし!」そう言いながら小さな声で「いつか わかる。」そう言った。

訳がわからなかったが 嫌な予感しか しなかった。
長女の髪の毛は 生まれた時から ずっと 私の母が 切っていた。

その母が 静かに 涙を流しながら長女の髪の毛を 切っていた。
長女の長い髪の毛は 短いボブになった。

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