長女のこと 38~41:完治はできない。死亡率は100%。

38. 私たちも 治療した事がありません

カンファレンスルームに呼ばた。

いよいよ 病名が告げられる。長女は絶対に大丈夫!何度も自分に言い聞かせた。

中に入ると 50代から30代と思われる男の先生が 3人 座っていた。
その瞬間 私は長女の病気が やはり難しい病気なのだと気付かされた。

真ん中に座っていた 一番年長であろう医師が ゆっくり話始めた。
お嬢さんの頭部の検査を 色々しましたが、お嬢さんの病名は 脳幹部グリオーマという 脳腫瘍の中でも 最も悪性度の高い病気です。 残念ですが、現在の医学では 治せません。
   予後は悪く 個人差はあるものの    平均で 余命1年前後です。

意味が 全く わからなかった。

20万人に一人という発症率ですが、   闘病期間が短く、脳外科医でも 、一生のうちに この病気の患者さんに 一人 出会うか 出会わないかの 希少疾患で  この病院に この疾患の患者さんは 今まで いません。私たちも 治療した事は ありません。 他の病院の医師と連携して   お嬢さんの治療にあたりたいと思います。ただ、完治はできません。死亡率は100%です。
放射線により 一度は症状が回復しますが  その後 確実に 再燃します。この病気には 抗がん剤は 効きません。

お医者さんが 治療出来ないなんて、 治療法が無い病気で 100%の死亡率の病気があるなんて その時まで 全く知らなかった。
長女に未来が無いなんて、来年が無いなんて、 考えたこともなかったし 信じることが出来なかった。

カンファレンスルームで 夫と二人で 泣きまくった。
そして S病院の Y先生にお願いしよう!そう 決意した。
私は Y先生なら 治してくれる!そう信じていた。

なぜなら 新聞の記事に長女と同じ 脳幹グリオーマのお子さんが長期生存している! と 書いてあったから。

2011年10月14日読売新聞に載った記事です
夫と 私は長女を この先生に お願いしよう!そして 治してもらう!そう信じていた。
※現在 Y医師は 都内のJ大学病院に 移られております。

40. 「診きれない」

医師からの 驚愕の宣告を受け 長女を見て 涙を堪える自信がなかった。

カンファレンスルームで 夫と 今後について話し合い、泣いている場合じゃない!
辛いのは 長女だ! 絶対に治す!
そう確認して 長女の病室に戻った。

看護師さんと一緒に待っていた 長女が「遅いよ・・・」半べそで言った。
不安な気持ちで、自分の体に起こっている事にも 不安があるのに、具合が悪いのに、グッと我慢して 待っていた長女
目の前にいる この子が来年には 居ないかもしれない。涙が溢れてしまう。
私も半べそで「ごめんね・・・。」謝った。

夫は 急いで S病院に長女の受け入れを お願いしに向かった。
間も無く 長女の病室に 看護主任さんが来た。

ちょうど 隣の個室の病室が開いていて看護主任さん「お母さん ちょっとだけ 時間良い?」と 隣の個室に呼ばれた。

カンファレンスで 夫が主治医に「S病院への転院を考えている」旨を伝えていたので、それを聞いたようで、
看護主任さん「娘さんの病気のお話が 主治医からあったと思うけど、 難しい病気で、はっきり言うと恥ずかしい話なんだけどね、ここでは 診きれないと思うの。もし 他に お嬢さんにとって 良い病院があったらそこに移った方が良いと思うの。」そう 言われた。
びっくりした。

都内の 有名大学病院で「診きれない」 そこまで悪いのか と ショックだった。

でも あの時看護主任が仰って下さったおかげで何の迷いも無く 転院出来たし、転院先で 長女が とても楽しく過ごせたので、今も あの時 言って下さった 看護主任に心から感謝している。

夫が S病院で話を決めて来て2日後に 転院することになった。
絶対に治してもらう!長女は 治る!それしか考えていなかった。

41. 転院先のS病院

都内の病院から 画像やカルテを借りて S病院へ夫の運転する車で 高速で2時間。
都内の病院を出るとき看護師さんに「お大事にして下さい。お母さんも 体に気をつけて下さい。」と言って頂いた。
内心 この病院の医師も 看護師さんも ホッとしてるだろうなぁ と思ってしまった。
それと同時に S病院で 絶対に治してもらうから! そう思っていた。

長女の腕は ヘパロックした状態で 点滴の針が刺さったままだった。
夫が車の中で「このまま どっか 遊びに行っちゃうか〜」
長女が 笑っていた。

本気で どこかに 行ってしまいたかった。

それと同時に移動中に 何かがあったら どうしよう?という不安もあった。
S病院付近まで着いて私「お昼 何食べたい?   病院に行ったら なかなか 好きなもの
   食べられないから   長女の好きなもの 食べよぅ!」
すかさず長女「マックのポテト食べたい!
夫「よっしゃー!   めいっぱい食っとけ!!」

長女に ポテトLサイズを買ってきた。
美味しそうに むしゃむしゃ食べる長女を夫と二人で 涙を堪えて 見ていた。
(今度 いつ食べさせてあげられるだろう。)

笑顔で見つめながら 涙を流している両親を 長女は どんな風に感じていたのだろう。
このまま 時間が止まって欲しかった。
しかし 現実が 押し寄せてくる。

長女は 麻痺が進行し嚥下困難の症状が出てなかなか 飲み込めなくなっていた。
食べたくても 食べられない。
ポテトも 少ししか食べられなかった。

その状況を見て、やはり S病院へ行くしかなかった。

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