長女のこと 44~47:母のやさしさ 主治医のやさしさ

44. Y先生のやさしさ

病室は 他に子どもが誰も居ない4人部屋の 窓側だった。

今まで 大部屋に入院したことは 沢山あったが、大人の人と一緒の部屋は 初めてだった。
長女8歳11ヶ月。

イライラしたり 我慢が苦手。(どちらも 病気の症状でした)
同室だったのは20代のお姉さんと 女子高校生。(病室から 高校に通っていた)

長女には なるべく 静かにするように言ってはいたが、時折 イライラが爆発していた。
Y先生が 毎日 朝 夕 回診に来てくれたので
私「子どもたちばかりの部屋に 移動させて欲しい」とお願いしたが、
Y先生「病気が違うので、ここで お願いします。」優しい先生が聞いてくれなかった。

その時は何で聞いてもらえないのか 全くわからなかったが、Y先生の優しさだったと 後に わかることになる。

45. 母が持ってきたもの

S病院に転院して 数日後私の母が お見舞いに来た。
電車を乗り継いで バスに乗って 往復3時間かかる。

長男(当時4歳11ヶ月)と次女(当時2歳4ヶ月)の世話をしながら、私に 手料理を持って来てくれた。
コンビニで買った物や長女が残した 病院食を食べていた私は突然の母の訪問と
母の愛と 母の味に 涙が出た。

そして 私の母も数日の間の  長女の衰弱した姿を目の当たりにして必死で 涙を堪えていた。
長女が 検査に行っている間に ある物を渡してくれた。。。

私の母「これ 知ってる?」

そう言いながら 渡してくれた物を見て 自分の不甲斐なさ 愚かさに 気づき
長女に 申し訳ない気持ちで いっぱいになった。

46. 将来の夢

私の母が病院に 持ってきてくれた物は長女が 小学校2時生の 3学期に書いた「自分史」という 文集だった。
最後に “20歳の自分へ” というメッセージが書かれていた。

長女  のどか が 20歳の 未来の自分へ 書いたメッセージ

私は 母に渡されて 初めて見た。
長女が自分史という文集を 書いているのは 知っていた。
小さい頃の写真や それにまつわるエピソードを色々 聞かれたから。

でも、書き上がったものを 見たのは 初めてだった。
長女が 恥ずかしがって 見せなかったのかもしれないが、
私が 仕事で忙し過ぎて 見せなかったのかもしれない。

きっと絶対に 後者だと思う。
私の母「のんちゃん(長女)の 机を整理したら出てきたのよ。見たら 泣けてきちゃってね。」
長女は 扁桃腺切除の手術を受けた時 色々な病気の子どもたちがいる という事を 目の当たりにした。
隣のベットだった 2歳年上の女の子は先天的な 足の病気で 一生歩けない と言っていた。
女の子「のんちゃんはいいなぁ!元気に退院出来て!私の方が 先に入院したのにのんちゃんの方が 先に退院しちゃう!」

とても仲良くしてくれたので、別れが 辛かったのだと思う。

長女は「自分は 手術したら 元気になれるけど、退院しても 治らない子も いるんだよね。
そう言っていた。
小児糖尿病がわかったばかりの 2歳の男の子もいた。

低血糖で寝てしまったり、夜中に起こされて ブドウ糖を食べたり、長男と 変わらない歳で毎日 インシュリン注射をしているのを長女は「偉いよね。」と よく言っていた。

だから 将来 医師になって病気の子を 元気にしたかったのだと思う。
書いた 半年後に 本人に癌が見つかった。
書いた時には もう既に 癌は あったと思う。
そして 何も知らなかった自分が 本当に 恥ずかしかった。

母として何をしていたのだろう。

長女に何をしてあげただろう。
何もしてあげていない。
涙が止まらなかった。

そして やっと やっと決心する。

47. 院内学級への初登校

初登校の日は朝も早々に起きて 身支度を終わらせ1時間以上前から 準備万端で病室で 自主勉強をして 30分前から そわそわしていた。
広い病院とは言え、院内にある教室なので、病棟から 5分あれば 確実に着くのに
始業15分前には 長女「もう 行く!」待ちきれなかったのだと思う。

麻痺の為に 歩きに辛い体で 一生懸命歩いて 登校した。
院内学級の前で 入るのを躊躇していたら先生がドアを開けて
先生「おはようございます!   はじめまして!」と 笑顔で 出てきて下さった。

長女おねがいが 一番のりだったが照れ笑いをしながら 教室に入り一度振り向いて 笑顔で手を振ってくれたので、安心して その場を去れた。

昼食前に 迎えに行くとお友だちと一緒に 笑顔で出てきた。みんな 同じ病棟の子ばかりだった。

みんなで一緒に 病棟に戻り長女「また 後でね〜」と お友だちに 手を振っていた。

男の子が3人 女の子は 長女と長女と同じ歳の ひなちゃんという子がいた。

病室に戻るなり

長女「これ 貰った〜」 と、時間割を見せてくれた。
長女「大嫌いな 体育が無いんだよ!それにね、休み時間は UNO して 遊んだんだ〜  院内学級 最高だよ!」満面の笑顔で 教えてくれた。

長女が 体育が苦手だったのは 病気の為だったのに全く気づいていなかったことに申し訳ない気持ちで いっぱいだった。

でも 長女笑顔を見て “転院して この病院に来て 本当に良かった!” 心から そう思った。

長女「午後も行くんだ〜」とても楽しみにしていた。
院内学級に通って 長女の笑顔が 格段に 増えた!

とても優しい 院内学級の先生に感謝の気持ちでいっぱいだった。

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