長女のこと:転院先の専門病院での「再宣告」

38. 治療法を教えてもらえると思っていた

S病院に転院して 数日後の 朝の回診時にY医師に「検査の結果も出ましたので、一度 お父さんと一緒に  お話させて頂きたいので、ご都合を 看護師に 知らせて下さい」と言われた。

“いよいよだ!いよいよ 治療法がわかる!”

早く知りたい!という思いとやっぱり怖い。という感情が 入り混じって 複雑だった。

当時 夫は S病院から 車で30分程の所に 勤めていた。
(職場の皆様には 大変ご迷惑をお掛けし、お世話になりました。心より感謝致しております)

 夫に伝えると「明日 何時でも大丈夫!」とのことで 翌日に決まった。
長女が  院内学級に行っている時間に 夫がやってきた。
緊張した面持ちの夫に私「絶対に 治してもらおうね!うちの娘は みんなと違うから  絶対に治るよね!」信じて疑わない私に
夫「う。ん。 そうだといいね。」小さい声で頷いた。

私「私たちが信じないで どおする!治る!って信じてれば     奇跡だって 起きるよ!あの 新聞に載ってた子みたいに うちの娘にだって 奇跡は起きる!」力強く言う事で 自分に言い聞かせていた。
約束の時間までが とても長く感じた。
いよいよ 看護師さんが 呼びに来た。

カンファレンスルームまでの道のりは期待と不安で 押し潰されそうだった。。。
カンファレンスルームにはY医師  S医師  F医師の 三人と 看護師さんがいた。

三人の医師が 主治医になって下さる事は 知っていたので驚きはなく 早く 治療法を知りたかった。

Y医師が「前の病院からのデータと こちらで 検査した結果
脳幹部喬グリオーマで 間違いありません。

それは 覚悟していたし 仕方ないことだと思った。

Y医師「お嬢さんの 脳幹部に出来ている腫瘍は  大人の拳ほどの大きさです。
大変腫瘍が大きいため  脳圧が高くなり 危険ですので
脳圧を下げる為の点滴の量を増やしますが色々副作用が出てしまいます。

この時 ムーンフェイスのことやイライラ 食欲増進などの副作用の話を聞いた。

Y医師「現在 危険な状態ですので、なるべく早く 放射線治療に入りたいと思います。
ただ、腫瘍が出来ている 脳幹部という部分は神経が固まっているところで  生命の維持に関わっている場所なので少しでも 傷をつけてしまうと 生きられなくなってしまいます。癌細胞を全て無くす為には通常は 周りの細胞にも 放射線を当てて 治療しますが お嬢さんの腫瘍の場合 周りは 神経で少しも傷がつけられない状態ですので 癌細胞を全て殺すことは 出来ません。
   そして、脳幹部は 生命の維持という  脳の中でも 特に大切な場所なので
抗がん剤が 入っていきにくく 個人差はありますが 効果は あまりありません。
この病気の方には 本当に申し訳ないのですが 今の医学では  世界中 誰も治せないのです。

世界が 崩れていくような 気がした。Y医師なら 長女を治してくれると 信じていたから。

39. 再宣告 世界中でだれも治せない

私は Y医師の話が  納得出来なかった。

私「新聞に載ってた子は抗がん剤が効いて 長期生存してるじゃないですか!
うちの娘だって 効くかもしれないじゃないですか!」怒りが 収まらなかった。
この先生に 諦められたら長女を治してくれる人は いない。
Y医師が ゆっくりと私にわかるように 説明してくれた。

Y医師「あの 新聞に載っていた子は生後11ヶ月で 脳腫瘍が見つかったんです。当時 小さ過ぎて 放射線治療が 受けられなかった。 残された治療が 抗がん剤だけだったんですが、たまたま あのお子さんには 効果があった。
通常 0歳から2歳までと2歳から18歳位までと18歳以上の 大人では 同じ 脳幹部喬グリオーマでも経過は 全く違います。おそらく 成長段階にある子どもと そうでない大人では 脳の状態が違うからだと思います。

大人の場合は 予後は発病から 平均すると 5年位ですが、娘さんのような お子さんだと 平均1年です。残された時間は 大変短いです。
放射線治療後 一度状態が良くなると思いますので、その間に 楽しい思い出を 沢山作って下さい。

優しく わかりやすく 話をしてくれたが、私が 求めていたのは 思い出じゃなく、長女の 未来だった。

Y医師「放射線治療後 一時的に状態が良くなると思いますが 必ず また 癌細胞が増えます。
その時は どうすることも出来ません。抗がん剤を使うかどうかはその時 また 話をしましょう。

納得なんて 出来ない・・・。長女の命を 諦めるなんて 出来ない・・・。
私は 言ってはいけないとわかっていたが我慢なんて出来なかった・・・。
私「もし 先生の 最愛の我が子が  脳幹グリオーマでも その方法をとりますか?
Y医師を 睨みながら 言ってしまったと思う。
Y医師は 悲しそうな顔をしながら
私の子どもが 脳幹グリオーマでも この方法しか 今の医学では 出来ないのです。
脳幹グリオーマのお子さんと ご家族の方には本当に申し訳ないと思っています。
このお話をする時が 医者をしていて一番 辛いです。
治せる病気の専門医になれば 良かったと思うことがありますが
 この病気の専門医も 必要なんです。なので この病気の専門医をしていますが 治せない事を 申し訳なく思っています

その時の Y医師は  医者の顔ではなく、父親の顔をしていた。
隣を見ると 夫が 声を殺して 泣いていた。

夫は 最初に 一人で Y医師を訪ねた時にもう既に 聞かされていたのだと思う。
そして、 色々調べて おおよそ 知っていたのだと思う。
長女の 今後を・・・涙が とめどなく 出てくる。 うまく 喋れなかった。

私「長女は 治らないなら   1%も    治る確率が無いなら せめて 娘が 辛くないように してあげて下さい。」
なんとか   伝えた。

Y医師「残念ですが 死亡率100%の病気です。お嬢さんが 辛くないよう全力を尽くします。

夫と私「よろしくお願いします。」 頭を下げた。

長女に 治療法がない。治療出来ない。
そう言われてもなお、私は 抗がん剤に 一部の望みをかけていた。

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